事業報告書
2023年度事業報告  
(2023 年4 月1 日~2024 年3 月31)     公益財団法人伊藤科学振興会

1. 事業概況
 本年度は前年度と同様に銀行金利も相変わらず低水準にあり、コロナ感染症もかなり治まってはきたが、感染症対策が必要であったため、国内外の投資マネーの先行きは不透明であり、財団の運用も難しい状況にあった。2020年より財団の運営は会計、経理を中心に国際文献社に業務委託を行うことになり、本年度は 4年目となり、研究助成事業及び財団の運用運営共に予定通り順調に執り行う事が出来た。本年は、自然科学 4分野(物理、化学、宇宙地学科学、生物)のうち、宇宙地球科学分野を研究助成対象として助成事業が行われた。本年で事業回数も 56回となるが、今後も財団実績の向上に更なる努力が望まれる
 財団の運用面においては、安全性が高く現状では比較的高率な国内債券地方債を保有している。世界情勢が不安定で、先行きの不透明感を考慮した選択であるが、利回りは今後期待できる状況にはなく、財団としては厳しい状況が続くものと思われる。

2. 研究助成事業
 2023年度の研究助成事業の宇宙地球科学分野を対象に国内主要国公私立大学及び研究機関に研究助成候補者の推薦を依頼したところ、43件の研究助成候補者が推薦された。 第一回定時理事会にて委嘱された外部の学識経験者による選考委員により、直接の利害関係者の排除を確認の上、2回の選考委員会により3名の助成候補者を決定した。

第1次選考委員会
 日時:2023年8月1日
 場所:ハイブリッド会議(対面およびzoom会議)
 参加者:(選考委員) 阿部彩子、山岡耕春、千葉柾司
     (理事) 小林昭子、日江井榮二郎、西原 寛
 <議事>
 最初に選考委員長を互選し、阿部彩子委員が選考委員長となった。その後、2022年度研究助成候補者一覧(43名)より各選考委員が候補者全員の申請書に目を通し選んできた4名―5名の研究助成候補者について推薦理由の説明やそれらについての意見交換の後13名の候補者を第一次選考通過者とした。13名の候補者全員の応募書類について審査員3名が改めて、第二次審査会までに確認することになった。

第2次選考委員会
 日時:2023年8月24日
 場所:ハイブリッド会議(対面およびzoom会議)
 参加者:(選考委員会) 山岡耕春、阿部彩子、千葉柾司
     (理事) 小林昭子、日江井榮二郎、西原 寛
 <議事>
 一次審査会において、最終的に13名の候補者が第二次審査候補者に選ばれていた。二次審査会では各委員が 分担してきた候補者について、応募書類の内容を基に その研究について報告があった。その後、候補者を絞り込む作業に入った。各委員が押す候補者について、独創的な研究を行っているかどうか、良い研究を行っているにもかかわらず、研究費に恵まれていないかなどが議論された。各選考委員が推薦する第一位、第二位の研究助成候補者について慎重に議論が行われ、委員の利害関係者の問題にも配慮して最終的に以下の3名が選出された。いずれもチャレンジングで興味深い研究であった。また、天文学、惑星科学、地球科学と異なる領域の研究者にバランスよく分かれたと評価された。
 審議の結果、2023年度宇宙地球科学分野研究助成候補者は下記に決定した。

氏名 所属 役職 研究題目 助成金額
播金 優一
東京大学宇宙線研究所 

助教

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を用いた宇宙初期の銀河の観測的研究
100万円
小玉 貴則
東京大学大学院
総合文化研究科
先進科学研究機構
特任助教
太陽系外ハビタブル惑星における気候
100万円
岡崎 啓史
広島大学大学院
先進理工系科学研究科
地球惑星システム学プログラム
准教授
回転式ダイヤモンドアンビルセルを用いた地球深部で発生する深発地震断層形成過程の直接観察
100万円

贈呈式
 日時:2023年10月19日
 場所:銀座資生堂 9階
 参加者:(贈呈者) 播金優一、小玉貴則、岡崎啓史
     (選考委員) 阿部彩子、山岡耕春、千葉柾司
     (来賓)羽柴秀俊(資生堂)、村上辰誠(資生堂)
     (財団役員) 小林昭子、日江井榮二郎、西原 寛、星 元紀、岡村定矩、 秋光 純、榎 敏明、藤原留美子、
     戸塚浩司、釜谷彰一、小谷正博、鈴木啓介、 浜野洋三、山形俊男、佐野 理、永原裕子、山中由也
     (事務局) 林 信宏
<議事>
 2023年10月19日(木)午前11時30分より銀座資生堂9階にて、第56回伊藤科学振興会研究助成金贈呈の会を開催した。本年は新型コロナウィルス感染症による行動制限がほぼ解除されたため、4年ぶりに対面で贈呈式と懇親会を開催した。西原寛常務理事の司会のもと、初めに小林昭子理事長より受賞者への祝辞及び研究助成事業の概要についての説明と挨拶が行われた。次いで受賞者各氏に小林昭子理事長より贈呈状が授与された。引き続いて、選考委員長の阿部彩子教授(東京大学)より祝辞及び受賞者の研究内容と選考理由についての説明があった。その後、岡村定矩理事の祝辞があり、贈呈式を12時に終了した。続いて記念写真撮影が行われた。
その後、ビュッフェ形式で4卓に座席を配置し、懇親会を催した。来賓の羽柴秀俊氏(資生堂)が挨拶と乾杯の発声をされ、懇親会を開始した。しばらく歓談後、理事・評議員・監事及び選考委員、来賓全員の自己紹介が行われた。続いて、受賞者の岡崎啓史氏、小玉貴則氏、播金優一氏の3名から研究内容を含めた自己紹介が行われ、出席者との質問やコメントのやり取りが行われた。その後、宇宙地球科学分野の財団役員である永原裕子評議員、山形俊男評議員長、濱野洋三評議員から受賞者への激励の挨拶が行われた。最後に、日江井榮二郎常務理事が閉会の挨拶をして、午後2時に懇親会を終了した。和やかな雰囲気の中で、多くの意見交換がなされ、受賞者との交流を深めることができた。

3. 理事会
定時理事会(第1回)
 日時:2022年5月26日
 場所:国際文献社会議室、オンライン会議システム(Zoom)
 <議事>
・職務の執行状況の報告
・事業報告、決算報告、監査報告の承認
・規程類変更の承認
・定款変更の確認
・評議員会を決議の省略にて開催することの決議

臨時理事会(第1回)
 日時:2022年5月26日
 場所:国際文献社会議室、オンライン会議システム(Zoom)
 <議事>
・理事長選任
・常務理事選任

臨時理事会(第2回)
 日時:2022年11月30日
 場所:国際文献社会議室、オンライン会議システム(Zoom)
 <議事>
・地学名称を宇宙地球科学に変更する件
・新常務理事推薦の件

定時理事会(第2回)
 日時:2023年3月14日
 場所:オンライン会議システム
 <議事>
・職務の執行状況の報告
・助成金事業に関する贈呈及び報告書の確認
・事業計画及び収支予算の決議
・資金調達及び設備投資の見込みの確認
・助成金事業に関する選考委員の選出ならびに決議
・国際文献社2023年度業務委託契約の決議
・常務理事の推薦
・新評議員推薦

4.評議員会
定時評議員会
 日時:2022年5月26日
 場所:国際文献社会議室、オンライン会議システム(Zoom)
 <議事>
・2021年度事業報告が行われた
・決算報告(貸借対照表、正味財産増減計画書、付属明細書、財産目録)の承認
・2022年度事業計画書及び収支予算書の承認
・資金調達及び設備投資の見込みの確認
・理事8名の選任
・定款変更の確認
・規程類変更の確認

臨時評議員会2023年3月30日
 場所:書面会議
 <議事>
・2022年度事業計画書及び収支予算書の承認
・定款変更の確認
・規程類変更の確認

5.評議員選定委員会
 日時:2023年4月26日
 場所:東京都新宿区山吹町358番地 当財団主たる事務所
 参加者:(選定委員・外部委員) 千葉和義、須藤 靖
     (選定委員・財団評議員) 永原裕子、 佐野 理
     (選定委員・財団監事) 釜谷彰一
     (理事/議案説明者) 小林昭子、榎 敏明
<議事>
 ・議長の選出
 ・評議員候補者案の審議ならびに選任

6. 事業報告の附属明細書 
 2022年度事業報告には、事業報告の内容を補足する重要な事項が存在しないため、附属明
細書を作成しない。